放射能対策

南相馬市特定避難勧奨地点を測定する(1)

20150124

 2014年12月28日、南相馬市の特定避難勧奨地点が強制解除されました。

152世帯中80世帯を内閣府被災者支援チームおよび現地対策本部・東電社員が訪問し、「10世帯ほどから賛成されたと思う」という民主的とはとても言えない理由で、政府による住民の避難への支援を解除してしまうというやり方に、批判的な意見が多く聞かれました。

 強制解除が実施された翌日、南相馬市に、こどもみらい測定所×ママレボ×ADRA JAPANの合同チームで測定に伺い、地域にお住まいの方々の声を聞いてきました。数回に分けてそのレポートをします。(文・写真:吉田千亜)

留守中の放射線測定で指定されなかったOさん

 最初にお伺いしたのはOさんのお宅だ。

周囲の家はすべて特定避難勧奨地点に指定されたが、Oさんのお宅だけ指定されなかったそうだ。
しかし、同居していた子どもや孫は避難、高齢のご夫婦だけが今も残る。

「自分たちがいないときに、測定をして、その結果、『指定しません』と言われた。
2011年7月のことだが、今でも理不尽だと思う」。Oさんはそう語る。当時、家の周辺で、5μSv/hある場所も点在していたという。指定基準は3.0μSv/h(子ども・妊婦は50cmで2μSv/h)だった。

 Oさんの自宅周辺を測定した。玄関前はおおむね0.2~0.5μSv/hだったが、裏にまわり、雨どい付近にセンサーを近づけると1μSv/hを超えた。行政による除染は済んでいる。奥に杉の葉のたまった場所では、2.5μSv/hを超える場所もある。自宅敷地内である。


家から少し離れると今でも2~3μSv/hの場所がある

 これは、物理的な半減期や自然減衰後の数値であって、2011年7月頃の放射線量は倍以上あったそうだ。

 用水路を渡り、Oさんの畑・田んぼのあたりでは、地表15㎝で1μSv/hのところが続く。公道にあがる砂利道でも、1μSv/hを記録した。

 さらに、公道を横断し、山側を測定すると、指定基準の3.0μSv/hを大きく上回る8μSv/h以上のホットスポットがあった。坂になっていて、水が集まる場所だった。

孫と毎日、風呂に入れるように戻してほしい

 Oさんのおとなりも、測定させてもらった。

 家から出てきた男性は、威勢のいい声で、子どもと孫が避難中であることを語り、東電や行政への怒りを述べた。そして、除染のやり方がずさんであることを話し、並べて置いてある大きな石を指さして「石の線量はぜんぜん下がっていない」と怒鳴るように言った。

 何度も、敷地内を自分で除染してきたそうだ。「わざわざ東京から測りにきたか。ご苦労さんだ!」という言葉と笑顔に押されるように、測定してみると、確かに、新しく砂利を敷いたところは0.2μSv/hが続いた。しかし、家の裏に回り、雨の落ちる場所を測定すると、見る間に1μSv/hを超えた。

「ここは、孫が住む家だ。孫が、住む、家なんだ」と、もう裏にあるもう一軒の家にも案内してくれた。

「どうなることを望みますか」と質問した。
「どうなるか、って……」と一瞬、言いよどんだあと、ぽつり、と言った。
「孫と毎日、風呂に入るのが楽しみだったんだ。毎日、一緒に風呂に入れるように戻してほしい」

 解除されても、お孫さんたちは、避難を続けるという。

孫を犬のように、首輪をつけて歩くことなんか、できますか?

 次に測定したHさんの家は、少し離れていたので、道路の脇の測定をしながら向かった。道路の真ん中が0.3μSv/hでも、道路脇の土の上は1.5μSv/hまで上がったりする。


除染した敷地内と、除染していないところがはっきりわかる


 道路そのものは、風雨で放射性物質が吹き飛ばされたり流されたりしていて、比較的線量が下がっていても、それらがたまる「道路脇」は高い。これは、郡山市や福島市などの通学路でも見られる傾向だ。昨年秋に開通した線量の高い国道6号でも同じことが起きている。

 Hさんの家には、先日、現地対策本部と東電の職員が訪問してきたという。解除の説明だった。「いくら家の周りが除染で下がったと言っても、通学路は下がっていない」と不安を話したが、それに対する彼らからの回答はなかった。

 自宅から見える場所にモニタリングポストには、0.3μSv/hという数値が表示されていた。

「あの数値を信じていたが、知り合いがそのすぐ脇のビニールシートのあたりを測定したら、1.5μSv/hあった、と言うんだ」

 Hさんは、それを指さして語る。家の周りを測りながら、Hさんが「この国はどうなっちゃったんだ?」とつぶやく。こんなやり方がまかり通るとは思っていなかった、と。非常事態であること、国が自分たち国民を第一に考えず、守ってくれないこと――「戦争が始まったら、日本中がこんなことになるんじゃないか」。そう語るHさん。今回の解除に限らず、今まで、理不尽なことがあまりにも多かったのだろう。

「解除って言ったって、孫を、『ここの線量は高いからダメだ』と、犬のように、首輪をつけて歩くことなんか、できますか?」

 最後に、吐き捨てるようにそう言った。


自然豊かな風景が広がる


アスファルトから一歩入った土の上


測定すると1μSv/hを超えた


→→南相馬市特定避難勧奨地点を測定する(2)につづく

放射能対策

2015年01月24日 14:33:17