子どもたちへの放射線ワークショップを開催しました。

20141022

放射線教育について、関心が集まっています。
文科省や環境省の放射線教育学習素材は有名ですが、それだけではなく、福島県内では市町村が独自に、放射線教育を行っているところもあります。また、先生が独自に放射線教育プログラムを作り、子どもたちに実験を交えて教えているケースもあります。稀なケースですが、企業が配布している放射線教育の冊子もみたことがあります。
放射線教育は、原発事故後の日本を、どう生きていくかというとても重要なテーマです。


「はかる、知る、くらす」

こどもみらい測定所と、NGO2団体と協力して作成した「はかる、知る、くらす」も、子どもたちが放射能について理解し、自分自身で自分の身を守ることを身に着けてほしいという願いをこめて作った冊子です。

最も大切なことは「自分で理解して、身を守る」ということ。
《子どもたち自身が放射線から自衛すること》に限定して考えると、《科学的な知識》というよりは(それをふまえた上で)、《生活の知恵》に近い、という視点が必要なのではないか――そんな思いも、「はかる、知る、くらす」にはこめられています。

2014年7月、こどもみらい測定所の代表、石丸偉丈さんが講師となり、NPO法人 ふくしま30年プロジェクトが主催した福島市のイベントにて、ワークショップを開催しました。テーマは、「はかる、知る、くらす」をもとにした、子どもたちへの放射線ワークショップです。内容は、「子どもたち自身が被ばく防護の知識を身に着けること」と、「放射線のをテーマに夏休みの自由研究をやること」という2本立て。

参加者は近くに住む子どもたちが18人。親子連れも多く、会場は見学の大人・学生さんも含めていっぱいになりました。


まず最初に、モニターをつかって、事故でどのように放射性物質が飛散したのか、ということを説明します。濃い色はたくさん落ちた場所、薄い色は少し・・・視覚的にわかりやすい方法で子どもたちに伝えていきます。

石丸さんが子どもたちに質問します。
「セシウムって聞いたことない人?」
9人、手をあげました。


その単語を毎日必ず聞くような活動を行っている、筆者を含めたスタッフにとっては、「聞いたことがない子どもがいる」ということは、少し意外でしたが、一般的には、そうなのかもしれない、とも思います。本来、子どもたちは知らなくてもよかった単語です。

石丸さんは常日頃、「放射性物質から『距離』をとることが大切だということを子どもたちに伝えたい」と話をしています。それを感覚的に理解してもらうために、ホットスポットファインダーを用いて、子どもたちに実験してみせていました。

放射線源(線量の高いところで採取した土)に、センサーを近づけると、0.13μSv/hになり、そこからどんどん離していくと、0.05μSv/hに減っていく・・・という様子を、実際に見せ、子どもたちにもやらせながら、「距離をとることが大切である」と説明します。


また、黒板に描いたイラストをつかって、「放射性物質はどこに集まるのか」ということを説明していきます。
ヒントは「雨」。

石丸さんは再び、子どもたちに質問します。
「どこに集まるか、知っていますか?」

子どもたちは、口々に、知っている場所を答えます。


「草むら」
「雨どいの下」
「水たまり」
「落ち葉」
「側溝の中」

学校や家庭内で、そういった話をする子どももいるのでしょう。
最後に、子どもたちと「3つの気をつけること」について確認しあいました。


① きょり(放射線量の高い場所から離れる)
② じかん(放射線量の高い場所に長くとどまらない)
③ さえぎる(放射線量の高いものからできるだけ遮蔽する)

できるだけポイントを絞って、わかりやすく、覚えやすい言葉で伝えます。




石丸さんのワークショップのあとは、元小学校の先生だった、星さんから、自由研究の新聞の書き方について、教えてもらいます。星さんは、福島市に住み、放射能市民測定所でスタッフとして働いています。

「放射線のことを自由研究に書くときは、『東京の人に福島のことを伝えられるように』ということを考えながら書くといいかもしれません」
そんなアドバイスをしながら、今日のまとめをしてくださいました。
「興味をもったこと」
「知らなかったけど、今回わかったこと」
「考えたこと」
「誰に知らせたいか」

――子どもたちも、「はかる、知る、くらす」を見ながら、黒板のまとめをみながら、今日のワークショップについて、考えているようでした。

小学生に伝える放射線教育のむずかしさは、「いかに、わかりにくいことをわかりやすく説明するか」だと思います。そのため、石丸さんをはじめとするワークショップの裏方スタッフは、試行錯誤を重ね、今回のワークショップを迎えました。それは、「はかる、知る、くらす」の制作と似た作業でもありました。

でも、実際に、子どもたちの顔を目の前にして感じたのは、まったく別のことでした。
一番大切なことは、実は、言葉で科学的なややこしいことを説明して理解してもらうことより、こういった授業を通して、大人たちが子どもたちのことを考えている思いが伝わることではないか、ということです。

震災前から、子どもとの関わりをライフワークにしてきた石丸さんのもとには、ワークショップの前後、自然に子どもたちが集まりました。慣れていくにつれ、どんどんにぎやかになり、みな、笑顔でのびのび遊んでいました。

たとえば、「家から帰ったら手洗いうがいをしよう」「花粉が飛ぶ季節にはマスクをしよう」というような、今までにも行ってきた習慣と同じように、被ばくの防護の習慣が身に着くことは大切かもしれません。(もちろん、そんな必要のなかった習慣を強いることに、大人は反省しつつ、ですが)

でも、それだけではなく、周りの大人たちが、真剣に自分たちのことを考えていることが伝わりさえすれば、「どう生活をすれば、自分自身を守れるか」ということを自分の力で考える芽になるのではないか――子どもたちと石丸さんとの関わりを見ながら、そんなことを感じた一日でした。


ハンディ版『はかる、知る、くらす。』リリースのお知らせ。


「はかる、知る、くらす」ハンディ版


ホットスポットファインダーで測定した知見をまとめ、専門家にも監修してもらった《生活の知恵・被ばく防護の知恵》がつまった、『はかる、知る、くらす』のハンディ版が完成しました。
こちらのハンディ版は、小学生が読むことを考えて作られた冊子になっています。
ぜひ、放射線量の高い地域に住んでいる子どもたちに、配布していただけたら幸いです。

お申込みは、こちらからどうぞ。

2014年10月22日 08:33:34