測定レポート福島

「はかる、知る、伝える。郡山」計測レポート

20140120

水田を計測しているときに、目の前にかかったおおきな虹


2013年12月「はかる、知る、伝える。郡山」プロジェクトとして、福島県郡山市の市街地をホットスポットファインダーで計測しました。福島第一原発の事故から約3年たった今も、高い空間線量の「ホットスポット」が随所で発見されました。

「はかる、知る、伝える。福島・山形」プロジェクト

 2013年12月、ADRA JAPAN( http://www.adrajpn.org/ )との共同プロジェクト「はかる、知る、伝える。福島・山形」の一貫として、福島県郡山市の市街地をホットスポットファインダーで計測しました。

 このプロジェクトは郡山を始めとした東北の各地で現地の団体と連携を取りながら、高性能の空間線量計ホットスポットファインダー(HSF)を使用して測定を行ない、その結果をもとにしたレポートを公開し、福島県をはじめとした東北各地の現状を広く伝えていくプロジェクトです。

 今回は郡山市と東京を拠点に保養プロジェクトなど、放射能に関する福島や巻頭の支援活動を幅広く行なっている「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト」:(こどけん http://kodomo-kenkotomirai.blogspot.jp/ )の郡山チームにご協力いただき計測をしました。

 当日は、ADRA JAPANの担当、小出一博さん、そしてコーディネーターとして、「こどけん」のメンバーで、冊子『ママレボ』( http://momsrevo.jimdo.com/ )編集チームの吉田千亜さんとともに、こどもみらい測定所の代表、石丸と、レポーターの服部が郡山市に伺いました。

郡山駅前と市内の学校の空間線量


当日は小雨模様でした


JR線をまたぐ跨線橋の上で。セシウムのピークが明瞭に見えます


郡山市内の小中学校の空間線量を記した地元の新聞記事


 小雨模様の郡山駅で出迎えていただいたのは、「こどけん」メンバーの宮坂さん(仮名)。今回は、市街地にあるもう一方のメンバーの方のご自宅と、そのお子さんたちが通う小中学校の通学路、そして宮坂さんのご自宅と、隣接するご自身が運営する学習塾周辺の計測を行ないます。

 宮坂さんが運転する自動車に乗り込み、早速HSFのスイッチを入れると、0.2〜0.3μSv/hという数値が出ました。駅の周辺は除染作業を行なっているとのことですが、今回待ち合わせをした西口と東口で空間線量は違いがあるそう。

 「市内にも線量の高い地域と、低い地域がありますよ」という説明とともに宮坂さんに見せていただいたのが、郡山市内の小中学校の空間線量を記した地元の新聞記事。毎週火曜日に、教室の中(窓を閉めた状態と開けた状態)と、校庭(地表1㎝の高さで校庭の中心と四隅の5カ所を測った平均値)を計測した数値が公表されているそうです。記事を見ると、校庭の線量は0.11〜0.40μSv/h。こどもみらい測定所がある東京都国分寺市周辺の平均的な空間線量0.04〜0.07μSv/h(ちなみに事故前は0.02〜0.04μSv/hぐらいであったといわれています)とは、桁がひとつ違います。

 石丸が「セシウムのピークが見えますね」と言うように、HSFの計測画面にはセシウムの134と137のピークが見受けられます。2011年の3月以来、3年近くが経った今も、福島第一原発の事故の影響は明瞭に残っています。

郡山市街地の住宅の中

 今回は基本的にHSFを地表から10㎝程度の高さで計測をするスタイルで行ないました。

 空間線量は地上1mの高さで計測することが多いのですが、今回はマイクロホットスポットを良く見分けるために低い位置で計測しました。

 測定は閑静な住宅街にある「こどけん」メンバーの植田さん(仮名)のご自宅周辺からはじめました。


1階リビングのウッドデッキ側の窓際で0.092μSv/h


ベランダの排水口付近で0.167μSv/h


2階寝室の畑に面した窓際。室内では最も高い線量でした


子ども部屋の窓際。窓は基本的に開けないそう


表土をはがした庭では0.241μSv/h


はがした表土を集めた場所で0.555μSv/h


ウッドデッキからの水滴がたまる箇所で0.927μSv/h


 3人のお子さんを育てる主婦である彼女は、事故の後、庭の表土をはがして除染し、高圧洗浄機で屋根を洗浄してもらうなど「とにかく家の中の線量を低く」するために努力を続けてきたそうです。

 今でも、ガイガーカウンターで空間線量を計測してホットスポットなどのチェックを欠かさず、「郡山で暮らす」ことに向き合っている母親として、HSFによる正確な測定で、生活圏内の空間線量をしっかりと把握したい、という思いをお持ちでした。


 まず、各部屋を測定しました。

 1階のリビングや2階の寝室はおおむね0.06〜0.11μSv/h。
 畑に面した寝室の窓付近で約0.19μSv/hを計測しました。

 「今も窓はできるだけ開けないようにしています」と語る子ども部屋は0.09〜0.11μSv/h。  

 ちなみに窓から見える屋根の上は「0.8μSv/hくらい」の線量でしたが、行政に依頼し除染をするなどして、最近は「0.3〜0.4μSv/hくらい」になっているそうです。

 次に家の周りを計測しました。玄関まわりの植え込みで約0.4μSv/h、コンクリートで固められた家の裏の、高圧洗浄をかけた水が流れ込んだ排水口付近で約0.6μSv/h。

 パートナーとともに、2011年の秋に表面の土を数㎝削った庭は、0.2〜0.4μSv/h、削った土を置いた場所で約0.5μSv/hだったので「除染」の効果があったと言えるでしょう。

 一方、放射性物質を含んだ雨水などが落ちてたまりやすいウッドデッキの端付近は約0.9μSv/hと数値も高くなります。


玄関脇(地上数㎝)の空間線量は約0.520μSv/h


(土壌測定の結果シート):玄関脇の土壌(地上数㎝の空間線量は約0.5μSv/h)をこどもみらい測定所に持ち帰って、測定しました。



 「気になるスポットはたくさんありますが、家の中は思っていたより、線量が低くなっていた。そういった意味では少し安心できました」という感想を語る彼女について、今度は、お子さんたちの通学路の測定にうつりました。

通学路に散見されたホットスポット


全般的にアスファルトの上で0.1〜0.2μSv/h、草地などの上で0.2〜0.3μSv/h、土の上で0.5μSv/h前後という空間線量でしたが、雨樋からの排水がたまる場所では2.167μSv/hを記録しました


小学校の校庭脇の道で1.151μSv/h


学校の正門にかけられた掲示板


子どもたちが歩きそうな道路の端を中心に通学路を計測しました。道ばたの「黒い砂(路傍の土)」がたまるような箇所では、空間線量も高くなりました


2.053μSv/hを記録。まわりの空間線量はそこまで高くなく「明瞭な原因が判らないですね(石丸)」


植え込みの下で0.932μSv/h。歩きながら正確な数値が出るHSFは「少し気になる」ところでもさっと計測できるところが特長です


 小学校へ向かう通学路を歩きながら計測していきます。

 お子さんたちは、普段から郡山市が配布する積算線量計を持ち歩いているそう。気をつける場所なども伝えてはいますが、心配はぬぐいされません。歩道の端や、建物の雨樋からの水がたまりやすい場所などに留意しつつ子どもたちが歩くコースを計測しました。

 小学校から幼稚園へと子どもたちが毎日歩く場所を歩いたところ、全般的にアスファルトの上で0.1〜0.2μSv/h、草地などの上で0.2〜0.3μSv/h、土の上で0.5μSv/h前後という空間線量でした。

 マイクロホットスポットも散見されました。主なところを列挙してみましょう。通学路脇の雨樋からの水が落ちてくる土の上で約2.2μSv/h、草地にたてられた反射板ポールの下で約2.1μSv/h、道路沿いの植え込みの下で約0.9μSv/h。その他にも道路のすみの「黒い砂(路傍の土)」がたまっているような箇所では0.7μSv/h程度の線量が出ました。

 学校の校庭周辺の道ばたでも約1.2μSv/hという線量が出る場所がありました。こういった場所はボランティアの方々や、シルバー人材センターから派遣された方が掃除もしていらっしゃるそう。

 「子どもたちだけでなく、そういった思いを持って活動してくださっている方々のことも心配ですよね」という宮坂さんのつぶやきに、現状の重さがにじみます。

 郡山市は平成27年度までかけて除染を実施するとしています。

 目標は、環境省の基準に従って、追加被ばく線量を年間1㎜Sv未満(地上1mの高さで0.23μSv/h未満)にすること。通学路や学校などの子どもが多い場所の除染は、優先的に行なわれています( http://p.tl/1B4S )。

 しかし、地表からの高さの違いこそあれ、今の段階でその基準を超えた場所が散見されていることに「思っていた以上に、ホットスポットがありましたね。正直に言ってショックです」と植田さんは肩を落とします。

 周りを見渡すと、新しく宅地が造成されているところが目につきます。

 土の入れ替えなどの除染がされており、避難区域から来られた方々が新しい住まいとして購入されるケースもあるそう。一方で、お知り合いのお宅の裏庭では、約3.0 μSv/hという空間線量が計測されもしました。

 行政に依頼した場合、すぐには除染されないケースも出てきます。

 計測が終わって「子どもたちが、大きくなって、どこに居住するかを自分で判断できるようになるまで、私たちが気を配り続けなければならないと改めて感じました」という感想は、郡山に住むおとなたちが心に持ち続けている思いを代弁する言葉なのでは、と感じました。



計測履歴を見ると、空間線量の激しいアップダウンが。マイクロホットスポットが随所にあることを物語ります


郊外の住宅地と農地の線量


学習塾の室内。高い線量が出がちな場所にはできるだけ生徒を座らせないそう


ウッドデッキ上で0.638μSv/hを記録。生徒たちの立ち入りは禁止にしています


道路を隔てた庭。枯れ枝や丸太を集めた場所0.615μSv/h


もみがらの上で0.898μSv/h


山林の側など空間線量が高そうな場所は、事故の後、基本的に立ち入っていないそう


 午後は、郡山市郊外の丘陵地にある宮坂さんのご自宅と学習塾のまわりを測定しました。

 小中学生が学びに来る塾は、まわりに広いウッドデッキが設けられています。HSFで測定をすると、建物の入り口から少し離れたところで約0.6μSv/hという線量を記録しました。


 「ウッドデッキの表面を削ったり、高圧洗浄で除染もしてきました。『除染をすると線量は元に戻らない』と言われてもいますが、なかなか線量は下がりません。

 福島第一原発の事故の前には、ここで塾生たちとバーベキューをすることが恒例でしたが、今は、入り口周辺を除いてウッドデッキは塾生立ち入り禁止にしています」と宮坂さん。

 0.2μSv/h前後の教室の中も、線量が高く出がちな場所にはできるだけ子どもたちを座らせないよう気を配っているそうです。


 他の気になる場所も見てまわりました。

 ご自宅の中にある「薪ストーブ」の周辺は約0.13μSv/h、庭の表土をはいだところで約0.2μSv/h、はいでいない場所で0.3〜0.4μSv/h、

「特に気になっている」とおっしゃる道を隔てた土地の薪や材木置き場で約0.5〜0.6μSv/h、もみがらが積まれた場所で約1.3μSv/hを計測しました。


 さらに、事故後、ご自身も含めて立ち入っていない、山林がそばまで迫った倉庫の雨樋の下で約4.9μSv/hという高い線量を計測しました。

 「事故が起きてからガイガーカウンターを手に入れて様々な場所を測ってきました。当初は庭で16μSv/hという値が出たこともあり、いろいろ対策を行なってきました。

 庭にゼオライトをまいたり、高圧洗浄機で洗浄したり。EM菌もまきました。避難区域から親戚がきたということもあったので、ひときわ『頑張らなければ』という思いでした」と事故後からの日々を振り返る宮坂さん。


 「こどけん」では、ご自身のお子さんや塾生たちのみならず、福島の子どもたちの健康への影響を考えて保養プログラムを行なうなど、今に至るまでさまざまな取り組みをされてきています。


山林の側に立てられた倉庫の排水口付近で4.729μSv/hを記録しました


「元に戻してほしい」


家の裏にある畑の空間線量も計測しました。ビニールハウスの中で0.563μSv/h。外の畑とほぼ同じ空間線量でした


空間線量0.238μSv/hを記録した畑のサラダ菜を採取、測定しました



 全般に約0.2〜0.3μSv/hという線量だった畑では、自家用に自然農法で栽培した野菜がなっていますが、事故後は内部被ばくを考慮して食べていません。

「義理の母が丹精こめて作っているものなのですが」と小さな声で語る宮坂さん。

 今回の計測の感想を伺うと、「家の周りの空間線量が思った以上に高かったですね。まだ事故は収束していないと改めて感じました。子どもたちが、ここに暮らし続けることにとても不安を覚えます。教え子たちのことを考えると、事故から3年近く経った今でも、塾をたたんだ方がいいのではと感じたりします」という言葉が返ってきました。

 最後に家から少し離れた水田の線量(0.4〜0.5μSv/h)を計測していると、目の前におおきな虹がかかりました。みごとな半円型の形と美しい色に見とれていると「ここらへんでは良く見ることができますよ」と宮坂さんが教えてくれました。

 終始穏やかな表情で計測レポートに協力してくださった宮坂さんは、福島で生まれ育ちました。

 その愛着深い地が、放射能による被害を受けてしまったことが「悔しいですね、元に戻してほしいです」。そう虹を見ながらおっしゃった姿が印象に残りました。




文:服部夏生(こどもみらい測定所/常緑編集室)

ホットスポットファインダーでの測定のお申込み

測定レポート福島 < 測定レポート

2014年01月20日 12:35:25

タグ
pickup

関連ページ