測定レポート関東

はかる、知る。 那須塩原 (前編)

20141114

アジア学院



2014年の7月5日、「はかる、知る。那須塩原編」として、栃木県那須塩原市にある「アジア学院」と「自由学園那須農場」にお伺いしてきました。いずれも福島第一原発の事故の影響を受けた地域にありながら、空間線量や食品をこまめに計測してきたほか、除染などの対策を3年間、行なってきた団体。高性能の空間線量計ホットスポットファインダー(HSF)で、各施設の空間線量を計測し、より正確な「現状」を把握したいというご希望をお持ちでした。

今回は、そのご希望に添いながら各施設の空間線量を計測しながらお伺いした、ここまでの取り組みや思いを中心にレポートします。

地震からの復旧と並行して、放射能対策を行なう

梅雨空のもと、アジア学院 ( http://www.ari-edu.org/ )にお伺いすると、副校長兼事務局長の荒川朋子さんが出迎えてくれました。

アジア学院は、アジアやアフリカを中心とした海外からの学生を対象に「農村指導者」を養成している学校です。1973年の設立以来、卒業生たちが各国の農村で成果をあげ、その独自のカリキュラムが国内外で高く評価されています。 敷地内にご家族で住みながら指導を続けてきた荒川さんをはじめとした学院の方々にとって、「311」の後は、さまざまな対応と選択を迫られる日々の連続でした。

「地震で倒壊した建物も多かったので、まずは復旧作業。並行して、放射線への対策を行ないました」。

2011年の4月に空間線量を計測した際は、5μSv/hを超える場所もあったそう。海外から来た学生たちの被ばくをできるだけ避けるため、2011年度の学生たちは東京で研修を受けてもらいながら、空間を中心とした放射線量を計測してきました。

「少し落ち着いた時点での、室内の空間線量の平均が0.2μSv/h弱でした。学院全体の空間線量をそれ以下にしようと、目標を立てて除染などを行なってきました」

と荒川さんは振り返ります。

皆が集まる「本館」の入り口周辺をHSFで地上から約10㎝の高さで計測してみました。
結果は0.07〜0.1μSv/h程度。

ちなみに2013年にHSFを使って同じ条件で、渋谷・原宿周辺を計測した際( http://kodomira.com/HSF/report/tokyo/entry-11345.html )は、全体的に0.02〜0.1μSv/h、高めのスポットで0.1〜0.18μSv/h程度でした。

荒川さんは「以前ここにあった建物も倒壊したので建て直しているのですが、その過程で床の上を計測したら0.2μSv/h以上だったことがありました。結局、コンクリートを削って、また塗り直しました」と語ります。


1973年の開校以来、「農業」を教え続けてきました。


地震によって倒壊したため、新たに建て直した本館周辺。


建て直す際に表土をはがすなどの除染作業も行なってきました。



市民測定所を開所して、いまの状況を伝える


アジア学院内に開所したアジア学院ベクレルセンター。

アジア学院は、キリスト教関係団体からの援助を募るなどしながら、震災後、建物の再建から除染まで多岐に渡る「311後の対応」を行なってきました。「測定」に関しても、空間線量計を屋外に設置しての定点測定や、定期的な敷地内の測定を繰り返しながら、状況を把握していきました。さらに、食品の測定も開始、2012年には市民測定所「アジア学院ベクレルセンター(ABC)」を開所しました。野菜を中心とした学院内の収穫物をはじめ、各地の作物や土壌などを、7月までで約3000検体、測定してきています。

「地域の皆さんを中心とした方々の判断基準となるデータとなればと願いながら、測定結果を公開してきました。37Bq/kgを独自の基準にしながら、『食』に対するお悩みにもできるだけ寄り添うようにしてきています。作物に関しては、2012年の時点では独自基準を上回るものも多く出ていました。しかし’14年現在では、私たちが使っている測定器(ベルトールド社製LB2045)の検出限界値の2Bq/kgで、セシウムが不検出になるものがほとんど、というレベルにまで減少しています。とはいえ3月に那須塩原市で採取した原木シイタケから28 Bq/kgが検出されるなど、特にキノコ、タケノコ、山菜類には高い数値が出るケースがあります。引き続き十分な注意を要します」

と、測定所立ち上げ時からのコアメンバーの山下崇さんが話すように、経年による変化なども公表しながら、現状を伝えています( www.nrarp.net/index.php )。


原発事故が起こった当初は、学生たちは東京に移動させました。


豚舎などは新たに建てなおしています。生まれたばかりの子豚たち。


ヤギ小屋の脇にある木の下。この地点で定点測定をしているそう。





「ここにとどまる」ことを選択する

HSFを使って敷地内を回った結果は、住居棟や校舎、豚舎周辺といった、震災後多くの「人の手」がはいった場所は0.05〜0.1μSv/h程度、神社、池のある森など木立周辺では0.16〜0.28μSv/h程度になりました。機器や高さに違いはありますが、この地域の震災前の空間線量は0.04〜0.05μSv/hだったというデータを参考にすると、原発事故の影響は残っていることは事実でしょう。


学院に隣接する、普段あまり人の手の入らない神社の木の下。


震災後に建築した海外からの生徒やゲストの住宅周辺。




アジア学院は、表土をはがすなどの除染作業や、空間線量から家畜の飼料に至るまで測定を継続する、といった対策を行ない、出来る限り追加被ばくを避けながら、生徒たちを教え続けてきました。しかし、実は、原発事故直後は放射能への不安から、一時は学院を移転することも考えたそう。ですが、最終的には「とどまる」ことを選択しました。

「決め手は、非電化工房( http://www.hidenka.net/indexj.htm )の藤村靖之さんの存在です。お話を伺うなどして、その知見を信頼していましたが、原発事故の後ほどなくして、データとともに『この地域の汚染であれば、大人の力で子どもの安全を守ることはできる。覚悟をきめて、そのことに徹しようと』という呼びかけとともにレポートを頂戴しました。そのレポートを読み込んで『この地にとどまり、出来るだけのことをやろう』と腹を据えました。そう決めてからは放射能対策に関しては『まずは、とにかく測定をして状況を把握しよう』と皆さんと協力しながら、活動をしてきました」

敷地内を歩きながらそう語る荒川さんたちは、この後訪れる自由学園那須農場などとともに、那須塩原市の子どもたちに経年的な健康調査を行なうよう市へ陳情もしながら、「ここでくらす」ことに向き合ってきています。

傍らの畑で、作業をする南米からの留学生が、測定をする私たちに気づいて、笑顔とともに挨拶をしてくれました。

はかる、知る。 那須塩原 (後編)へ続く

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2014年11月14日 12:39:39

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