測定レポート関東

はかる、知る。 アースデイ東京×こどもみらい測定所

20140418

 2014年、4月19日(土)、20日(日)に代々木公園で開催されるアースデイ東京。そこに出品する茨城県那珂市のpoco a poco農園(20日のみ)を訪れて、空間線量や作物、土壌の放射線量を測定しつつ、これまでの取り組みや「安心でおいしい野菜」作りへの思いを伺ってきました。当日出品予定の作物は、詳細な測定の結果、セシウム合算の検出下限値1.5Bq/kg未満の不検出でした。


poco a poco 農園の和知健一&則子ご夫妻と3人のお子さんたち。

無農薬、無肥料で除草しない農家

 4月19日(土)、20日(日)に代々木公園で開催されるアースデイ東京にはバリエーション豊かな「おいしいもの」を出すお店が出展します。
 数あるお店の中のひとつに、アースデイマーケットのコーナー内に出店する茨城県那珂市のpoco a poco(ポコ・ア・ポコ)農園があります(20日[日]のみの出店です)。
 ここでは、無農薬、無肥料で除草もしない農法で、食用の花から古代小麦まで百種類以上の野菜を栽培しています。特徴は、それぞれの土地で古来育ってきた「在来種」を積極的に育てていること。購入することが一般的な「種」も、できるだけ畑から自家採取して、おいしい野菜作りを追求しています。出来上がった野菜は、不揃いですが「野菜本来の濃密な味がする」と、都内のレストランを中心に人気を呼んでいます。

 茨城県那珂市は、福島第一原発の事故による影響を受けました。現在も市役所で「災害・放射線情報
を更新してもいます。poco a poco農園も、事故直後は自主的に出荷を停止しました。大学に依頼して、作物から放射性物質が検出されないことを確認してから出荷を再開、今も定期的に土壌や作物を測定し、安全と判断してから出荷を続けています。

 今回は、そんなpoco a poco農園に、こどもみらい測定所のイシマルとハットリがお伺いして、畑周辺の空間線量と、土壌やアースデイ当日に出荷する予定の作物の放射線量を計測しながら、「安全でおいしい野菜」への思いを伺ってきました。


無肥料で除草をしない自然農法の畑は、こどもたちの格好の遊び場。


子どもたちが駆け回る農園

 春うららかな日曜日、無人駅に降り立った我々を迎えてくれたのは、poco a poco農園のおかみ、和知則子さん。農園でとれた小麦を使ったパンを製造、販売しながら、3人のお子さんを育てるお母さんでもあります。

 あいさつもそこそこに車に乗り込み高性能の空間線量計ホットスポットファインダー(HSF)のスイッチを入れるイシマル。ほどなく農園の畑に到着すると、3人のお子さんたちが出迎えてくれました。
「ねーねーこれなーに」
 と早速イシマルが手にしたHSFにくいつきます。
「これはね、あちこちに飛んでいる放射線の量をね……」
 というイシマルのまじめな解説に聞き入りますが、ほどなく飽きて、棒を持って、「鬼ごっこ」を始める3人組。全身からエネルギーがはじけ出ている様子です。

 「子どもたちは、毎日、ああやって遊び回っています。作物の放射線量は測っているのですが、彼らが遊ぶ場所の空間線量のことも少し気になっていますね」
 と、彼らを見ながら語る和知健一さん。
 ならば、ということで、畑に入る前に「よく遊んでいる」というビニールハウス脇の水たまり周辺の空間線量を計測しました。
 「そうですね、0.01から0.04μSv/hくらいでしょうか」
 先日、「みんなで測ろうプロジェクト」と題して、渋谷、代々木公園周辺を計測した際と同じく地上から約10㎝の高さで測っての数値。渋谷、代々木公園周辺はおおむね0.02〜0.1μSv/hだったので、ここの線量が「高い」という実感はありません。


「ねーねーこれなーに?」


子どもたちが遊ぶ水たまり周辺。0.019μSv/h。



畑周辺

空間線量と、作物の放射線量

 少し気も楽になりつつ、畑の測定に入ります。無肥料で除草もしない「自然農法」を行なっている畑は、一見すると、草ぼうぼうの「空き地」に見えます。ところが目をこらすと、そこかしこにおいしそうな野菜が顔を出しています。

 健一さんが農家を志したのは30歳の時。「一生続けられる仕事を」と退職して、大学の農学部に再入学しました。卒業後、現場で修業をつんで、青年海外協力隊員として、メキシコで栽培指導を行ない、そこで在来種への興味を持つようになります。帰国後、実家近くの畑で農業を始めて今年で8年。さまざまに試行しながら、自然農法を実践してきました。

「事故の後、やはり、除草しないことが放射線量にどう影響が出るかは、気にし続けています」
 と振り返る健一さんについて、畑に入って行きます。空間線量はおおむね0.03〜0.06μSv/h。少し高めになったのは、ビニールハウス脇の土の上で0.079μSv/h。
「ビニールハウスに降下した放射性物質が、雨などで流れ落ちて、たまったのだと思います」
 というイシマルの解説にうなずく和知夫妻。

 アースデイ東京には、数ある作物の中から、菜の花、ケール、しまらっきょう、ローズマリーなどを出す予定とのこと。それらの中から「貝地高菜」という茨城県産の在来種も、検出器で測定しました。
 こどもみらい測定所に持ち帰り測定をすると、原発事故由来のセシウムの反応は見えないようでしたが、天然放射性物質と見分けがつきにくいところがありました。そこで、市民測定所の仲間に依頼し、ゲルマニウム半導体検出器という、さらに詳細に計測できる機械でクロスチェックをしてもらいました。結果はセシウム134と137合算で1.5Bq/kg未満の不検出でした。 

 畑の土も採取して、こどもみらい測定所の検出器で測定をしました。これらの結果の詳細や、その他、放射能の測定について「解説してほしい」という方は、アースデイ東京のこどもみらい測定所のブースにぜひお越し下さい。



ビニールハウスの間の0.079μSv/hが、畑周辺で最も高かった数値でした。


パン作りに使うケールを収穫する則子さん。


「落ち葉」は、念のために掃き集めているそう。空間線量を測りましたが、他の場所と変化は見られず。落葉の数値は初年度以降はかなり下がってきていると解説するイシマル。


一度掘り起こしたジャガイモ畑の土を採取して測定しました。


セシウム合計で97.9Bq/kg前後という数値となりました。首都圏の土壌を計測するとおおむね、30〜200Bq/kgくらいの数値が出ます。



貝地高菜(カイジノタカナ)を採取して測定しました。周辺の空間線量は0.03〜0.07μSv/h。


ゲルマニウム半導体検出器によって、セシウム134と137合算で1.5Bq/kg未満の不検出という結果が出ました。(測定:アイメジャー・信州放射能ラボ)

すこやかな「食」を提供するために

 わずかな時間で、子どもたちとすっかり仲良くなったイシマルが、彼らにいざなわれて測った通学路や公園の線量は、滑り台の下など、高いところで約0.1μSv/h。その結果をマップ化して皆で見ました。
 「これまでも、線量計を自治体から貸してもらって、気になるところをはかってきました。今回、さらに詳しく調べられたのがよかったです。子どもたちが遊ぶところの線量も比較的低いと感じましたね。正直、安心しました」
 と語るご夫妻。事故の後、作物のことだけではなく、自分たち家族も「放射能」と向き合ってきただけに、実感がこもります。

「やはり、地元産の安心できるものを食べる、ということが、すこやかな生活をすごすための基本で、とてもたいせつなことだと思っています。原発事故で、『放射能』と向き合わざるを得なくなりましたが、他の『気をつけたいこと』も含めて、ひとつひとつに注意を払いながら、自分たちが納得できるものをお届けしていきたいと考えています」
 と則子さんが語ると
「これからも、請われた場合はできるだけ正確なデータを提示していきたい。その上で、みなさんが判断し、選んでいただければ、嬉しいですね」
 と、健一さんが続けました。

 話の尽きることはありませんでしたが、日も西に傾いた頃、大きな乾燥ヘチマをプレゼントにもらったイシマルとともに、再びローカル線にのって、東京へと戻ったのでした。
 和知さんちの野菜、ほんと、おいしいですよ!


文:服部夏生(常緑編集室/こどもみらい測定所)


全員でHSFの画面をのぞきこむ和知家のひとびと。


農園で自然に乾燥して「たわし」化した巨大なヘチマをプレゼントされたイシマル所長。


近所の公園


『はかる、知る、くらす。 〜こどもたちを放射能から守るために、わたしたちができること〜』

こどもみらい測定所が、NGO団体のJANIC、ADRA Japanと制作した冊子「はかる、知る、くらす。」が完成しました。原発事故から3年がたった今、どのようなことを、どのように気をつけて暮らして行けばいいのかを、専門家の先生にお話を伺い、わたしたちと仲間が積み重ねてきた知識をまとめた本です。
アースデイ東京のこどもみらい測定所ブースで無料配布していますので、どうぞおこしください。
http://kodomira.com/hsk.html

ホットスポットファインダーでの測定のお申込み

測定レポート関東 < 測定レポート

2014年04月18日 07:45:08

タグ
pickup

関連ページ