奥多摩町一帯は、特に首都圏に住む私たちにとって、自然にふれあえる場であるとともに、都の水源の約19%を担う多摩川の水源地として重要な場所でもあります。今回は、JR奥多摩駅を拠点に、水道水源林周辺などを計測し、東日本大震災から約四年経った同地域の「いま」を測定してきました。

 文・写真:服部夏生(常緑編集室/こどもみらい測定所)



奥多摩で自然体験プログラムを行ってきたアースマンシップ

 今回、ナビゲートをお願いしたのは、アースマンシップの代表、岡田淳さん。アースマンシップは、岡田さんの体験をもとにして、子どもから大人までを対象として自然の中で遊びながら自らの「気づきの力」や「察知力」を高めて行くプログラムの数々を行ない、高い評価を得てきているNPO法人です。

 彼らにとって、奥多摩町は1996年の設立以来、多くの活動が行われてきた大切な場所のひとつ。ゆえに福島第一原発の事故による、同地域への「放射能」の影響には、ひときわ注意を払ってきました。

「子どもを預けてくださる親御さんたちが心配されている姿を見て、まずは測ろうと思いました」

 そう振り返る岡田さん。キャンプを行う場所などの空間線量を繰り返し計測し、水道局の測定部署に直接、計測状況や結果を聞くなどして情報を集め、ホームページ等で公表した上で、活動を継続してきました。

「数値をどのようにとらえるかは、各自が判断せざるを得ない部分が多いのが『放射能』。だからこそ、できるだけ信頼性の高い判断基準となる情報を出していかなければと考えました」

 こどもみらい測定所も、土壌の計測などでご活用いただいてきました。

 今回は、当測定所に来所される方々からも「比較的、空間線量が高いのでは」というご相談が多い奥多摩地域で「ホットスポットファインダー(HSF)」による空間線量の計測と、主なポイントの土壌の計測を行い、現状を知ろうと、ご協力をお願いさせていただきました。


今回計測のナビゲーターを努めてくださったアースマンシップの岡田淳さん


奥多摩駅を拠点に各所の空間線量と、8つのポイントでの土壌を計測しました

奥多摩町の市街地を計測する


 計測を行ったのは、2015年の2月4日。晴れわった空の下、登山客の姿がちらほらと見える奥多摩駅前をスタート地点として、地上10㎝の高さでHSFでの計測を始めました。

 駅裏の砂地で0.06μSv/h前後、裏山の斜面の草地で、0.1μSv/h近く、駅近くの道路の上で0.03μSv/h前後。今回の計測全般でも、空間線量に関しては、おおむね0.03〜0.1μSv/hという数値が出ました。2013年12月に渋谷や原宿を計測した際は、全体的に0.02〜0.1μSv/h、高めのスポットで0.1〜0.18μSv/hだったことに比べて、大きな差異はないように見受けられます。

 駅の南側に位置する愛宕山の土壌を計測しました。愛宕山一帯は、アースマンシップのプログラムでもよく歩きにくる上、町民たちも気軽に遊びに来る場所だそう。

 最初は遊歩道が整備されている北側の斜面で計測しました。中腹の木立の脇で、地表から5㎝掘り下げて、土を採取します。空間線量を計測すると0.024μSv/h。さらに山を降りて、少し住宅街を歩いて、集落のはずれの東側斜面でも同じ手法で採取しました。ここの空間線量は0.065μSv/h。

 それぞれの土壌は、セシウム134と137の合算で127Bq/kg前後と93Bq/kg前後という計測結果が出ました。2014年あたりの多摩地区の土壌はおおむね30〜200Bq/kg程度、約1年前に東京都の夢の島公園内の土壌を計測した際は、371Bq/kg前後だったことを考えると、多摩地区の一般的な、「低いレベルの環境汚染」であるといえそうです。


地上10㎝の高さで計測します


土壌は、5㎝の深さから上の部分を約1kg採取して計測します。採取したポイントは1mの高さの空間線量も計測。みんなのデータサイトにおける「土壌測定プロジェクト」の公式データとして活用します


人の手があまり入っていないような場所では、空間線量が0.1μSv/h程度まで上昇するスポットも散見されました


駅の西側の住宅街のはずれで計測。空間線量が0.065μSv/h、土壌が47Bq/kg前後という結果が出ました


水道水源林を計測する


 駅の西側の住宅街でも一カ所同じように計測をしてから、小河内貯水池(奥多摩湖)に向かいました。都民の大事な水源でもある湖周辺の空間線量は、おおむね0.06〜0.07μSv/h。湖畔の土は80.5Bq/kg前後でした。

 今度は、川乗山(かわのりやま)へと登っていく林道に入りました。一帯は水道水源林となっており、「安全でおいしい水の安定供給の原点」として、水道局が管理しながら、良好な水環境を保全しています。

 許可を取った車しか入れない沢沿いの林道を登って行き、ポイントで計測をしながら、環境教育実習地に向かいます。

 沢沿いの杉林と広葉樹に囲まれた空間は、アースマンシップ創設以来のフィールドでもあります。30人程度の小中学生が集まり、テントに寝泊まりしながら自炊し、自然の中での暮らしを体験するプログラムなどに活用しているそう。

 アースマンシップでは、東日本大震災以降、「被災地サポートプロジェクト」として、福島県の子どもたちにリフレッシュしてもらおうと、定期的に保養プログラムに招いてもいます。

「福島から来た子どもたちは、自然をありのままに受け取る子が多いですね」

 と岡田さん。自然体験に初めて参加するような子どもたちは、大人からの指示を待ったり、ゲームを考えだしたりして、時間をかけながら少しずつ自然とふれあうケースが目立ちますが、福島からの子どもたちは、すぐに目を輝かせて、泳いだり走ったりと、シンプルに自然の中で遊ぶケースが多いそう。そんな様々な個性や考え方を持つ子どもたちが、協力しあって自然の中で時を過ごすことで得られる「気づき」を大切にしたい。岡田さんはそう話します。


小河内貯水池(奥多摩湖)。東京都民の「水がめ」のひとつです


川乗山沿いの沢をのぼっていきます。途中にある日だまりで計測。空間線量は0.091μSv/h、土壌は65.2Bq/kg前後でした


杉林が続く林道


アースマンシップのプログラムが行われる環境教育実習地


苔の生えた地表付近で0.068μSv/hでした


教育実習地では杉林の斜面の土壌を採取しました


 環境教育実習地の土壌は、以前こどもみらい測定所でも計測させていただきました。その際は広場の土で約90Bq/kgという数値が出ています。今回は、杉林の中の土壌を計測したところ42.2Bq/kg前後という結果が出ました。ちなみに空間線量は0.037μSv/hでした。

 沢の水は、奥多摩町の水道水として使われています。それだけに、トイレの場所や、排水の処理などを通しての環境保全にもひときわ気を配っているそう。

 そんなお話を伺いながら、自動車にしばらく乗って、水源地に近い場所まで沢を登っていくことにしました。山の稜線近くの小さな橋のたもとで計測したところ、空間線量は0.061μSv/h、土壌は103Bq/kg前後となりました。

「100Bq/kg以上という数値は、本来は低レベル放射性廃棄物に分類されるので、問題はありますが、まずは穏当な数値と言えるでしょう。もちろん水源地だけに、引き続き注意を払っていった方がいいとは思います」

 当所代表の石丸はそう語ります。


一帯は水道水源林となっています


山の稜線近くの水道水源林まで登り、土壌を採取しました


「ここに住む方にも現状を届けたい」


 林道を降り、最後に、日原(にっぱら)の集落に連れて行っていただきました。

「プログラムに参加してくれた子たちに、最後にここの温泉でのんびりしてもらってからお別れすることもあるんです。ここに限らず、奥多摩町に住む方々には、設立以来さまざまな形でお世話になっている。その方たちにも放射能の影響がどのくらいあるのか、という情報を届けたいですね」

 そう語る岡田さんについて、ふきのとうがちらほらと顔を出している空き地で計測をすると、空間線量は0.063μSv/h、土壌は80.2Bq/kg前後という結果がでました。

「空間線量を測り、土壌も比較的広範囲に8検体無作為に採取しての結果として考えると、奥多摩はかなり低めの汚染で止まったという印象です。前から計測したいと思っていた地域を今回は回って、情報を出すことができて良かったと思います」

 と石丸が感想を述べると、岡田さんも、

「4年経ったこともあるとは思いますが、現状は僕が考えていたより、さらに穏やかで平均的なもののように思えました。いずれにしても、情報としっかり向き合っていくことが、これからを暮らす上で大切だということを改めて感じました」

 と、これまで独自に計測されてきた経験をふまえた上での感想を語ってくれました。

 水源地としても、私たちにとって大切な自然を内包する奥多摩町。そこの主だった場所を岡田さんと計測した今回のツアーは、自然とともにある人のあり方について改めて思いを巡らせるものとなりました。 


日原の集落。この奥に鍾乳洞などの観光地があります


集落はずれの空き地では、ふきのとうが顔を出していました


一日の計測を終えたアースマンシップの岡田さんと当所代表の石丸


* この計測とレポートは、真如苑からこどもみらい測定所が助成を受けて行っている多摩地域を測定するプロジェクトの一貫として行っております。


アジア学院



2014年の7月5日、「はかる、知る。那須塩原編」として、栃木県那須塩原市にある「アジア学院」と「自由学園那須農場」にお伺いしてきました。いずれも福島第一原発の事故の影響を受けた地域にありながら、空間線量や食品をこまめに計測してきたほか、除染などの対策を3年間、行なってきた団体。高性能の空間線量計ホットスポットファインダー(HSF)で、各施設の空間線量を計測し、より正確な「現状」を把握したいというご希望をお持ちでした。

今回は、そのご希望に添いながら各施設の空間線量を計測しながらお伺いした、ここまでの取り組みや思いを中心にレポートします。

地震からの復旧と並行して、放射能対策を行なう

梅雨空のもと、アジア学院 ( http://www.ari-edu.org/ )にお伺いすると、副校長兼事務局長の荒川朋子さんが出迎えてくれました。

アジア学院は、アジアやアフリカを中心とした海外からの学生を対象に「農村指導者」を養成している学校です。1973年の設立以来、卒業生たちが各国の農村で成果をあげ、その独自のカリキュラムが国内外で高く評価されています。 敷地内にご家族で住みながら指導を続けてきた荒川さんをはじめとした学院の方々にとって、「311」の後は、さまざまな対応と選択を迫られる日々の連続でした。

「地震で倒壊した建物も多かったので、まずは復旧作業。並行して、放射線への対策を行ないました」。

2011年の4月に空間線量を計測した際は、5μSv/hを超える場所もあったそう。海外から来た学生たちの被ばくをできるだけ避けるため、2011年度の学生たちは東京で研修を受けてもらいながら、空間を中心とした放射線量を計測してきました。

「少し落ち着いた時点での、室内の空間線量の平均が0.2μSv/h弱でした。学院全体の空間線量をそれ以下にしようと、目標を立てて除染などを行なってきました」

と荒川さんは振り返ります。

皆が集まる「本館」の入り口周辺をHSFで地上から約10㎝の高さで計測してみました。
結果は0.07〜0.1μSv/h程度。

ちなみに2013年にHSFを使って同じ条件で、渋谷・原宿周辺を計測した際( http://kodomira.com/HSF/report/tokyo/entry-11345.html )は、全体的に0.02〜0.1μSv/h、高めのスポットで0.1〜0.18μSv/h程度でした。

荒川さんは「以前ここにあった建物も倒壊したので建て直しているのですが、その過程で床の上を計測したら0.2μSv/h以上だったことがありました。結局、コンクリートを削って、また塗り直しました」と語ります。


1973年の開校以来、「農業」を教え続けてきました。


地震によって倒壊したため、新たに建て直した本館周辺。


建て直す際に表土をはがすなどの除染作業も行なってきました。



市民測定所を開所して、いまの状況を伝える


アジア学院内に開所したアジア学院ベクレルセンター。

アジア学院は、キリスト教関係団体からの援助を募るなどしながら、震災後、建物の再建から除染まで多岐に渡る「311後の対応」を行なってきました。「測定」に関しても、空間線量計を屋外に設置しての定点測定や、定期的な敷地内の測定を繰り返しながら、状況を把握していきました。さらに、食品の測定も開始、2012年には市民測定所「アジア学院ベクレルセンター(ABC)」を開所しました。野菜を中心とした学院内の収穫物をはじめ、各地の作物や土壌などを、7月までで約3000検体、測定してきています。

「地域の皆さんを中心とした方々の判断基準となるデータとなればと願いながら、測定結果を公開してきました。37Bq/kgを独自の基準にしながら、『食』に対するお悩みにもできるだけ寄り添うようにしてきています。作物に関しては、2012年の時点では独自基準を上回るものも多く出ていました。しかし’14年現在では、私たちが使っている測定器(ベルトールド社製LB2045)の検出限界値の2Bq/kgで、セシウムが不検出になるものがほとんど、というレベルにまで減少しています。とはいえ3月に那須塩原市で採取した原木シイタケから28 Bq/kgが検出されるなど、特にキノコ、タケノコ、山菜類には高い数値が出るケースがあります。引き続き十分な注意を要します」

と、測定所立ち上げ時からのコアメンバーの山下崇さんが話すように、経年による変化なども公表しながら、現状を伝えています( www.nrarp.net/index.php )。


原発事故が起こった当初は、学生たちは東京に移動させました。


豚舎などは新たに建てなおしています。生まれたばかりの子豚たち。


ヤギ小屋の脇にある木の下。この地点で定点測定をしているそう。





「ここにとどまる」ことを選択する

HSFを使って敷地内を回った結果は、住居棟や校舎、豚舎周辺といった、震災後多くの「人の手」がはいった場所は0.05〜0.1μSv/h程度、神社、池のある森など木立周辺では0.16〜0.28μSv/h程度になりました。機器や高さに違いはありますが、この地域の震災前の空間線量は0.04〜0.05μSv/hだったというデータを参考にすると、原発事故の影響は残っていることは事実でしょう。


学院に隣接する、普段あまり人の手の入らない神社の木の下。


震災後に建築した海外からの生徒やゲストの住宅周辺。




アジア学院は、表土をはがすなどの除染作業や、空間線量から家畜の飼料に至るまで測定を継続する、といった対策を行ない、出来る限り追加被ばくを避けながら、生徒たちを教え続けてきました。しかし、実は、原発事故直後は放射能への不安から、一時は学院を移転することも考えたそう。ですが、最終的には「とどまる」ことを選択しました。

「決め手は、非電化工房( http://www.hidenka.net/indexj.htm )の藤村靖之さんの存在です。お話を伺うなどして、その知見を信頼していましたが、原発事故の後ほどなくして、データとともに『この地域の汚染であれば、大人の力で子どもの安全を守ることはできる。覚悟をきめて、そのことに徹しようと』という呼びかけとともにレポートを頂戴しました。そのレポートを読み込んで『この地にとどまり、出来るだけのことをやろう』と腹を据えました。そう決めてからは放射能対策に関しては『まずは、とにかく測定をして状況を把握しよう』と皆さんと協力しながら、活動をしてきました」

敷地内を歩きながらそう語る荒川さんたちは、この後訪れる自由学園那須農場などとともに、那須塩原市の子どもたちに経年的な健康調査を行なうよう市へ陳情もしながら、「ここでくらす」ことに向き合ってきています。

傍らの畑で、作業をする南米からの留学生が、測定をする私たちに気づいて、笑顔とともに挨拶をしてくれました。

はかる、知る。 那須塩原 (後編)へ続く

ホットスポットファインダーでの測定のお申込み


交流会は、ゲームでスタート! 「イブの森」(福島市)で


5月25日日曜日、福島市でひらかれたイベントに、
こどもみらい測定所・国際協力NGOセンター(JANIC)・ADRA JAPANと共同で制作した
『はかる、知る、くらす』をお届けに行きました。

イベントは、
「ふくしまくらす交流会  ~だれかのためでなく  わたしだけのためでなく~」で、
NPO法人CRMS市民放射能測定所 福島の主催でひらかれました。

会場は、「イブの森」。
旬の野菜かつオーガニックにこだわった食事を出してくれる、
落ち着いた雰囲気のレストランで、福島駅の目の前にあります。

その日の参加者は、大人も子どもも、参加者・スタッフ含めて50名。

にぎやかな子どもたちのスペースでは、小さな子どもから小学生まで、
手作りの小麦粘土をしたり、映画を観たり、スタッフの大人にじゃれたり、
楽しそうに過ごしていました。

一方、お母さんたちのスペースでは、大きなテーブル二つにわかれ、
お互い、自己紹介をし、連絡先を交換したりなど、終始和やかな時間が流れました。

福島県内で健康相談会をされてきている、黒部信一先生、小林恒司先生も
歓談に参加してくださいました。

黒部先生は
「いままで、子どもたちのレントゲンを極力撮るのをやめよう、
という運動をしてきたけれど、こういうことになってしまった。
できることを、やっていきましょう」

という挨拶を、
また、小林先生も

「自分は精神科医だけれど、放射能の問題を『心の問題』
にしようと思っているわけではありません。スクラムを組んで考えていきたい。
いつでも、相談にのります」とお話してくださいました。

参加したお母さんは様々な経験をされた方がいらっしゃいました。

「1年間こちらに住み、避難して、翌年に戻り、私はすべて経験しました。
だから、それぞれの気持ちがわかるかもしれません」

「こちらに戻って、1か月経ちました。
まだ、一度も、放射能に対する不安を話すことができなかったから、
今日は話ができてよかった」

「1年前に戻ってきて、ある交流会で出会った4人と、新しい会を作って、
避難経験を話せる場をひらいています」

「相手が同じように考えているのか、わからないから、さぐってしまいます。
こうして、何も気にせずに不安を口にしたり、
同じような気持ちを聞けたりすると、ほっとします」


「はかる、知る、くらす」配布方法は、表紙をクリック!

ご参加くださったみなさんに、1冊ずつ、『はかる、知る、くらす』も、
持ち帰っていただきました。

近くに座っていたお母さんから、
「これ、わかりやすくていいですね」
と、言っていただきました。

今後も、『はかる、知る、くらす』をつかった勉強会など企画し、
福島県内をはじめ、ご希望の場所で、開催していく予定です。

日々の生活の、小さな一助となれますように。(吉田千亜)


 2014年、4月19日(土)、20日(日)に代々木公園で開催されるアースデイ東京。そこに出品する茨城県那珂市のpoco a poco農園(20日のみ)を訪れて、空間線量や作物、土壌の放射線量を測定しつつ、これまでの取り組みや「安心でおいしい野菜」作りへの思いを伺ってきました。当日出品予定の作物は、詳細な測定の結果、セシウム合算の検出下限値1.5Bq/kg未満の不検出でした。


poco a poco 農園の和知健一&則子ご夫妻と3人のお子さんたち。

無農薬、無肥料で除草しない農家

 4月19日(土)、20日(日)に代々木公園で開催されるアースデイ東京にはバリエーション豊かな「おいしいもの」を出すお店が出展します。
 数あるお店の中のひとつに、アースデイマーケットのコーナー内に出店する茨城県那珂市のpoco a poco(ポコ・ア・ポコ)農園があります(20日[日]のみの出店です)。
 ここでは、無農薬、無肥料で除草もしない農法で、食用の花から古代小麦まで百種類以上の野菜を栽培しています。特徴は、それぞれの土地で古来育ってきた「在来種」を積極的に育てていること。購入することが一般的な「種」も、できるだけ畑から自家採取して、おいしい野菜作りを追求しています。出来上がった野菜は、不揃いですが「野菜本来の濃密な味がする」と、都内のレストランを中心に人気を呼んでいます。

 茨城県那珂市は、福島第一原発の事故による影響を受けました。現在も市役所で「災害・放射線情報
を更新してもいます。poco a poco農園も、事故直後は自主的に出荷を停止しました。大学に依頼して、作物から放射性物質が検出されないことを確認してから出荷を再開、今も定期的に土壌や作物を測定し、安全と判断してから出荷を続けています。

 今回は、そんなpoco a poco農園に、こどもみらい測定所のイシマルとハットリがお伺いして、畑周辺の空間線量と、土壌やアースデイ当日に出荷する予定の作物の放射線量を計測しながら、「安全でおいしい野菜」への思いを伺ってきました。


無肥料で除草をしない自然農法の畑は、こどもたちの格好の遊び場。


子どもたちが駆け回る農園

 春うららかな日曜日、無人駅に降り立った我々を迎えてくれたのは、poco a poco農園のおかみ、和知則子さん。農園でとれた小麦を使ったパンを製造、販売しながら、3人のお子さんを育てるお母さんでもあります。

 あいさつもそこそこに車に乗り込み高性能の空間線量計ホットスポットファインダー(HSF)のスイッチを入れるイシマル。ほどなく農園の畑に到着すると、3人のお子さんたちが出迎えてくれました。
「ねーねーこれなーに」
 と早速イシマルが手にしたHSFにくいつきます。
「これはね、あちこちに飛んでいる放射線の量をね……」
 というイシマルのまじめな解説に聞き入りますが、ほどなく飽きて、棒を持って、「鬼ごっこ」を始める3人組。全身からエネルギーがはじけ出ている様子です。

 「子どもたちは、毎日、ああやって遊び回っています。作物の放射線量は測っているのですが、彼らが遊ぶ場所の空間線量のことも少し気になっていますね」
 と、彼らを見ながら語る和知健一さん。
 ならば、ということで、畑に入る前に「よく遊んでいる」というビニールハウス脇の水たまり周辺の空間線量を計測しました。
 「そうですね、0.01から0.04μSv/hくらいでしょうか」
 先日、「みんなで測ろうプロジェクト」と題して、渋谷、代々木公園周辺を計測した際と同じく地上から約10㎝の高さで測っての数値。渋谷、代々木公園周辺はおおむね0.02〜0.1μSv/hだったので、ここの線量が「高い」という実感はありません。


「ねーねーこれなーに?」


子どもたちが遊ぶ水たまり周辺。0.019μSv/h。



畑周辺

空間線量と、作物の放射線量

 少し気も楽になりつつ、畑の測定に入ります。無肥料で除草もしない「自然農法」を行なっている畑は、一見すると、草ぼうぼうの「空き地」に見えます。ところが目をこらすと、そこかしこにおいしそうな野菜が顔を出しています。

 健一さんが農家を志したのは30歳の時。「一生続けられる仕事を」と退職して、大学の農学部に再入学しました。卒業後、現場で修業をつんで、青年海外協力隊員として、メキシコで栽培指導を行ない、そこで在来種への興味を持つようになります。帰国後、実家近くの畑で農業を始めて今年で8年。さまざまに試行しながら、自然農法を実践してきました。

「事故の後、やはり、除草しないことが放射線量にどう影響が出るかは、気にし続けています」
 と振り返る健一さんについて、畑に入って行きます。空間線量はおおむね0.03〜0.06μSv/h。少し高めになったのは、ビニールハウス脇の土の上で0.079μSv/h。
「ビニールハウスに降下した放射性物質が、雨などで流れ落ちて、たまったのだと思います」
 というイシマルの解説にうなずく和知夫妻。

 アースデイ東京には、数ある作物の中から、菜の花、ケール、しまらっきょう、ローズマリーなどを出す予定とのこと。それらの中から「貝地高菜」という茨城県産の在来種も、検出器で測定しました。
 こどもみらい測定所に持ち帰り測定をすると、原発事故由来のセシウムの反応は見えないようでしたが、天然放射性物質と見分けがつきにくいところがありました。そこで、市民測定所の仲間に依頼し、ゲルマニウム半導体検出器という、さらに詳細に計測できる機械でクロスチェックをしてもらいました。結果はセシウム134と137合算で1.5Bq/kg未満の不検出でした。 

 畑の土も採取して、こどもみらい測定所の検出器で測定をしました。これらの結果の詳細や、その他、放射能の測定について「解説してほしい」という方は、アースデイ東京のこどもみらい測定所のブースにぜひお越し下さい。



ビニールハウスの間の0.079μSv/hが、畑周辺で最も高かった数値でした。


パン作りに使うケールを収穫する則子さん。


「落ち葉」は、念のために掃き集めているそう。空間線量を測りましたが、他の場所と変化は見られず。落葉の数値は初年度以降はかなり下がってきていると解説するイシマル。


一度掘り起こしたジャガイモ畑の土を採取して測定しました。


セシウム合計で97.9Bq/kg前後という数値となりました。首都圏の土壌を計測するとおおむね、30〜200Bq/kgくらいの数値が出ます。



貝地高菜(カイジノタカナ)を採取して測定しました。周辺の空間線量は0.03〜0.07μSv/h。


ゲルマニウム半導体検出器によって、セシウム134と137合算で1.5Bq/kg未満の不検出という結果が出ました。(測定:アイメジャー・信州放射能ラボ)

すこやかな「食」を提供するために

 わずかな時間で、子どもたちとすっかり仲良くなったイシマルが、彼らにいざなわれて測った通学路や公園の線量は、滑り台の下など、高いところで約0.1μSv/h。その結果をマップ化して皆で見ました。
 「これまでも、線量計を自治体から貸してもらって、気になるところをはかってきました。今回、さらに詳しく調べられたのがよかったです。子どもたちが遊ぶところの線量も比較的低いと感じましたね。正直、安心しました」
 と語るご夫妻。事故の後、作物のことだけではなく、自分たち家族も「放射能」と向き合ってきただけに、実感がこもります。

「やはり、地元産の安心できるものを食べる、ということが、すこやかな生活をすごすための基本で、とてもたいせつなことだと思っています。原発事故で、『放射能』と向き合わざるを得なくなりましたが、他の『気をつけたいこと』も含めて、ひとつひとつに注意を払いながら、自分たちが納得できるものをお届けしていきたいと考えています」
 と則子さんが語ると
「これからも、請われた場合はできるだけ正確なデータを提示していきたい。その上で、みなさんが判断し、選んでいただければ、嬉しいですね」
 と、健一さんが続けました。

 話の尽きることはありませんでしたが、日も西に傾いた頃、大きな乾燥ヘチマをプレゼントにもらったイシマルとともに、再びローカル線にのって、東京へと戻ったのでした。
 和知さんちの野菜、ほんと、おいしいですよ!


文:服部夏生(常緑編集室/こどもみらい測定所)


全員でHSFの画面をのぞきこむ和知家のひとびと。


農園で自然に乾燥して「たわし」化した巨大なヘチマをプレゼントされたイシマル所長。


近所の公園


『はかる、知る、くらす。 〜こどもたちを放射能から守るために、わたしたちができること〜』

こどもみらい測定所が、NGO団体のJANIC、ADRA Japanと制作した冊子「はかる、知る、くらす。」が完成しました。原発事故から3年がたった今、どのようなことを、どのように気をつけて暮らして行けばいいのかを、専門家の先生にお話を伺い、わたしたちと仲間が積み重ねてきた知識をまとめた本です。
アースデイ東京のこどもみらい測定所ブースで無料配布していますので、どうぞおこしください。
http://kodomira.com/hsk.html

ホットスポットファインダーでの測定のお申込み



青梅ブンブンの会さん主催で、
ホットスポットファインダーによる測定を行いました。

今回の測定では、
キッズウィークエンド」という、
福島の子どもたちが、リフレッシュキャンプで訪れる場所を網羅。

放射性物質は広範囲に拡散しましたので、
福島からの子どもたちがリフレッシュで遊びに来る場所をしっかり測っておこう、と企画されました。

キッズウィークエンドは、アースデイ東京のイベントの一つです。
青梅、藤野、飯能、代々木のアースデイ東京会場周辺で、
2012年から3年間行われています。

今回は、青梅組の活動地点を計測しました。

青梅ブンブンの会さん公式サイトでのご報告はこちら

当日は、御嶽山で自然ガイドをしておられる方や、地元育ちの方、またポラン広場の方に案内して頂きました。
キッズウィークエンドには頼もしいメンバーさんが集まっています。



まずは、御嶽山駅前の、リフレッシュキャンプで子どもたちも宿泊する宿舎A-Yardさんの線量を測定。
屋上と、部屋の中をあちこちはかって回りました。

屋上でごはんを食べたりするので、まずは屋上から測定。
0.05μSv/h前後で特に問題となる数値は見いだされませんでした。

尚、今回の測定は全て、地上10cmほどの線量です。
地面に近くなるので、地上1mより線量はやや高くなる傾向があります。

屋上の次は、宿舎の中。
概ね0.04~5μSv/hほどで、事故前からの一般的な空間線量でした。



平和です。

次に、湖の方に行きました。
宿舎のオーナーさんが、カヤックの世界的な選手だそうで、
スイスーイと登場。




「キッズウィークエンド」青梅組は、湖の上でのボート乗りなどとっても楽しそうです。

こちらのページにたくさん楽しそうな写真が載っています。

-------------------------------------------

ホットスポットファインダーは、GPSによって緯度経度情報を自動取得し、マップ化します。
カヤックの勇姿を拝んでいる間にも、地道に放射線量は計測されていますので、
便利です。

以下の画像は、その際に計測された湖付近での測定マップです。(マップを見る際の注意点をページ最下部に記載しています。ご確認ください。)

マップで、湖の中を測っているように見える点もありますが、測定当時は水が引けていました。



今回は、朝から昼すぎまで青梅奥多摩周辺をかなりあちこちはかって回る強行軍。
湖の次は、御嶽山へ。

ケーブルカーに乗って、出発〜。




頂上に到着です。

御嶽山は、山の上に集落があり、驚きました。

霊験あらたかであり、古来、民間の信仰対象であった様子が良くうかがえる世界が拡がっています。




苔の線量が高かった、というので測定をしてみて、思ったほどではないですね、という様子。



萱葺き屋根の宿坊が残る風景。
素敵です。

空気と景色のきれいな山上ワールド。

測定マップは以下のようです。
概ね0.07~0.09μSv/hでした。

一部、0.1μSv/hを超える地点は、石畳の天然放射線の影響だと見えました。
大理石や石畳は、花崗岩を多く含むので、天然の放射線も若干多めに出ます。



御嶽山を降りたら、
今度は、河原です。

河原では、ワイルドな流れの中でカヤックを行う人あり。

キッズウィークエンド青梅組、
いろいろ楽しい自然体験スポット満載です。





さてその次は、
子どもたちがバスで最初に到着する地点と、
その横のグラウンドを測定してみました。

放射性物質が溜まりやすい、側溝や滑り台の下なども測り、チェック。

グラウンドの端の、水が集まる辺りで、0.1μSv/h前後という数値がありましたが、
概ねどこも0.03~9μSv/hです。




最後は自然体験館の測定でした。
子どもたちは、こちらでもいろいろ楽しいアクティビティにさんかする予定だそうです。

青梅ブンブンの会さんのこちらのページにその様子が掲載されています。

楽しそう!




この自然体験館でも、楽しいアクティビティが予定されている様子。
青梅ブンブンの会さんのこちらのページにその様子が掲載されています。

こちらの線量の様子は、以下のマップです。

平和です。



かなり広範囲に測定させて頂き、
あちこちの実際の線量がよく見えて有意義でした。

今回の測定値の詳細をgoogle mapでご覧になりたい方は、
ぜひ青梅ブンブンの会のこちらのページでご確認ください。

会の皆様、
様々なご準備、ありがとうございました!

キッズウィークエンド@青梅が素晴らしい会となりますように。

文責:石丸偉丈(こどもみらい測定所)

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


<線量マップをご覧いただく際の注意点>

・GPSの精度に数m程度の誤差がありますので、地図上に線量表示された地点は幾分のズレを含んでいます。(特に、コンクリートの建物などの内部や近くでは、大きく位置がずれることがあります。)

・空間線量は揺らぎのあるものであり、誤差を含みます。表示された測定値は10秒間測定の平均値です。

・今回の測定では、地上10cm程の高さで測定をしております。 ・放射線には原発事故や核実験由来の人工放射線と、花崗岩や大理石などから放出される天然放射線があり、それらの合算値が表示されています。

・道路上で、広めの間隔で表示されている地点は、車内での測定であり、車体によって放射線が遮蔽され、線量が低めに表示されることが一般的です。(遮蔽率は、車種や測定位置などの条件によって変化します。)

・線量は0.1μSv/h毎に表示色が変更されています。 (測定に使用された「ホットスポットファインダー」は、1~10μSv/hの10段階で校正がなされており、精度の高い測定を行うことが出来る空間線量計です。)

ホットスポットファインダーでの測定のお申込み