「ウラン系列とシンチレーターでのγ線測定」

NaI(ヨウ化ナトリウム)シンチレーター、という測定器で当所は測定しておりますが、
細かくγ線のエネルギーを見分ける能力=「分解能」が十分高くないので、
セシウムやヨウ素131と、「ウラン系列」という天然核種が見分けがつかない、ということが得てしてあります。

これは、ゲルマニウム半導体検出器という「分解能」が高い測定器を使えば解決される問題ですが、測定器自体の値段が高く、またランニングコストもかかるので、一般の市民測定所ではなかなか手が出ません。(福島や、せたがや、信州の測定所さんでは、ゲルマニウム半導体検出器を導入してらっしゃいます。)

そこで、ウラン系列を可能な限り見分ける(推測する)ことが、NaIなどの測定器を使う測定所では重要な仕事になります。
一般の方で、放射能測定資料を見る方にとっても、大事なポイントです。

「ウラン系列」と検索をかければ、いろいろな資料は出てきますし、図も出てきます。
こどもみらい測定所でも、ウラン系列について、ほぼ毎日ご説明する必要がありますので、ボランティアの方にお手伝いいただき、図表をつくっておりますので、それをここに掲載いたしました。

半減期や、γ線を放出する主な核種(鉛214、ビスマス214)のγ線のkeV値(エネルギー値)と、放出率(一回の原子核崩壊で、どのぐらいの確率で各エネルギー値のγ線が放出されるか)が書いてあり、
また、Cs-134、Cs-137およびI-131の放出するγ線に関しても表をつけてあります。

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「ヨウ素131と鉛214、セシウム134とビスマス214」

I-131は365keVのγ線を放出し、それが鉛214(Pb-214)の352keVと近く、NaIシンチレーターでは見分けがつきません。そこで、Pb-214があると、I-131として誤検出されることがままあります。

また、ビスマス214(Bi-214)は609keVのγ線を放出し、Cs-134は605keVのγ線を放出します。やはり見分けがつきません。
また更にやっかいなことに、Cs-134の605keVとCs-137の662keVも、お互いのピークの山の端が被りあっているので、Cs-134とCs-137の見分けも十分つかない面もあり、
そのため、Cs-134と近いはずのBi-214が、Cs-137の数字として誤検出されることもある、というややこしさもあります。

ともあれ、「ウラン系列」のPb-214、Bi-214のkeV値とCs-134およびCs-137、I-131のkeV値等を覚え、スペクトル上の典型的なピークを見分けることがだいたいできるようになることは、NaIによるγ線測定において非常に重要なことですので、
ここに図表と解説を書かせていただきました。

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「鉛214が検出されているときの、スペクトル画面」

ちなみに、以下の図は、鉛214が検出されている時の当所測定器の測定画面キャプチャーです。

鉛214は、242keV,295keV,352keVのあたりにピークが立つのですが、画面左の方の3本の緑の線のあたりが、それぞれ鉛214のγ線ピークです。
これらのピークがあると、鉛214の存在がまずあるだろうと判断されます。

このスペクトルは、土壌を測定しているときのもので、セシウムの三つのピークも見えていますから、セシウムも検出されています。
ただ、Cs-134とBi-214のピークは被るので、Cs-134の数値はそれによって幾分過大評価されているかもしれません。

Bi-214の存在をこのスペクトルからぱっと見で見分けるのはかなり難しいのですが、Pb-214のピークは典型的に現れていますので、
半減期27分ほどのPb-214が崩壊してできるBi-214は、Pb-214があればかならず存在すると言えるので、Bi-214もある、と言え、
Cs-134の数値が過大評価されている可能性がある、と推測がたちます。
(やっかいなことに、Cs-137の数値に寄与してしまうこともあるのですが。。。。)